創立150周年を迎えて

2025年1月21日

平安女学院は、今の大阪市西区川口にあった外国人居留地に1875年、明治8年に開校しました。創立者で初代校長は、米国聖公会から派遣されたEllen Gertrude.Eddyで、彼女が既にあった聖テモテ学校に来校した3名の女子生徒に英語を教えたのが、本学の始まりです。1880年には、校名を「照暗女学校」とし、英語の学校名をSt. Agnes’ Schoolといたしました。聖アグネスは、ローマ帝国時代の西暦305年、弾圧によって13歳で殉教し、後に聖人とされた女性であり、1月21日は、彼女が殉教した日にちと伝えられています。

学院は、1894年に京都のこの場所に移転し、校名を「平安女学院」とあらためました。ちょうど平安京遷都から1100年の節目の年でした。京都では、明治館などの校舎を建設し、全く新たに生徒を募集して、1895年4月から授業をはじめました。その2年後には、いまの聖アグネス教会礼拝堂が献堂されました。

以来、大阪での20年と京都での130年の併せて150年にわたり、本学院は、キリスト教主義を基盤とした女性のための教育を行い、社会の多方面で活躍する多くの卒業生を輩出して参りました。創立以来、数々の困難がある中で、学院の教育を守り育て、発展に尽くされてきた方々、特に、日本聖公会の初代主教で、幕末以来日本での伝道に尽くし、本学院の創立にも大きな功績のあったウィリアムス主教をはじめとする米国聖公会と日本聖公会の方々の尽力を忘れることは出来ません。

本学院の教育は、常にキリスト教の教えと共にありました。校章が象徴する「信仰・希望・愛」という3つの精神、川口での学校の設立に尽力したクインビー司祭のことばに基づく「知性を拡げ、望みを高くし、感受性を豊かにし、そして神を知らせる」という建学の精神、高校・中学の学則にある「キリスト教精神に基づき、自他の人間としての価値を尊び、真理と正義を愛する人格の完成」、あるいは大学の学則にある「キリスト教の精神にもとづく教育を通して自由で自立した人格を形成」するといった教育の目的・目標のいずれにも、キリスト教の精神にもとづく教育によって、すぐれた人格を育成することが学院の存在意義として据えられています。創立から150年を経て、女性をとりまく社会的な環境は大きく変化・改善しましたが、まだまだ課題は少なくありません。これからも、われわれの学院の基礎にあるこの理想を失ってはいけないと思います。

現在、日本では少子化がどんどんと進み、私立学校の経営を取り巻く環境はたいへん厳しさを増しています。本学院には、いま、大学、高等学校、中学校、認定こども園があり、約1200名の学生・生徒・児童が学んでいます。戦後の一時期、3000名を超えた学生・生徒数が半分ほどの数になってしましました。学院の経営にも数々の課題と困難を抱えたまま、われわれは、次の50年、あるいは100年に向かって進んでいかなければなりません。

しかし、本学院が1875年に始まったときの生徒数はたったの3名でした。そのことを思えば、将来を悲観することは無いのかもしれません。長い歴史のなかで、それぞれの時代の困難は必然的にやってきます。われわれの教育の理想を堅持し、未来にむかって学校を続けていくことができるように、現在のわれわれは、すべきことをひたむきに続けて参りたいと思います。

これまで本学院が、150年にわたる歴史を積み重ねてくることが出来たのは、多くの方々のご協力のあってのことです。教育活動や進学・留学などで提携・協力をいただいている学校法人・学校の皆様、取引先企業をはじめとする地域社会の皆様、同窓生の皆様、いつも学校を見守って下さっている保護者の皆様、そして共に働く教職員の皆様に心からの感謝を申し上げるとともに、今後もご支援・ご協力を賜われますようお願いを申し上げます。

平安女学院 理事長 毛利 憲一